雪よりも霜が降てる時のが寒い21/21
はぁ…と息を履けば、煙草の煙を履いたかのように真っ白な湯気のような息が出る。
銀時は、カチッとライターの火をつけると、何気なくはいた息をみて吸いたくなったタバコを唇に挟み、火をつけた。
銘柄は初心者に優しい、ピアニッシモFRAM。
すうっと煙を吸い込めば、ほろ苦い中にかすかなラズベリーの味が広がる。
銀時は、それに眉を顰めると、早々にそのタバコの火を消し、キャスター・フロンティア・ワン・ボックスへと銘柄を替え、そのタバコに火をつけた。
ほのかに香る、バニラの甘い匂いに銀時はようやく満足したのか、近くの椅子に深く腰を沈めて、そのタバコをゆっくりと味わうかのように吸い込んだ。
「タバコなんて吸ってたっけか?」
唐突に声が聞こえてきて振り返った先には高杉の姿が。
銀時は、ふと目を細めると、タバコの火を消した。
「普段あんま吸わねーだけで、たまには吸うってえの」
特にこんなときには。
そう考えてペロリと唇を舐めた。
ほろ苦い、タバコの味に何かを求めるように高杉を見つめる。
「…そーゆことか、もうちっと素直になれねぇのか?あぁ?」
その視線の中から銀時の思考を汲み取った高杉は呆れたように美しく柔らかい銀髪をそっと撫でつつ、ため息をついた。
「俺が素直とか逆に気持ちワリーだろ」
「それもそうだ」
ぎゅっと、銀時の体を高杉が抱きしめる。
「タバコでごまかせると思うなよ?」
そうこぼした高杉は、そのまま貪るように銀時の唇を奪った。
ああ、これこれこの味だ。
と銀時は自らの手に未だ残っているキャスターの箱を小さく潰すと、待ちわびた味に深く酔いしれる。
タバコを見ると思い出す。
その味、この感触。
相手から伝わるほろ苦さに愛しさを覚えつつ、銀時は幸せそうに目を閉じた。